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2006年9月30日 (土)

10月1日では遅すぎる

 10月1日では遅すぎるから、あと45分くらいで日付が変わる前に急いで書く。早川文庫から出たこの本の初版の発行年月日が1976年5月31日ということだから、読んだのももう30年近く前になるのだろう。ジャンル分けすれば、時間テーマのSFということになる。
 正確ではないかもしれないが、確か1967年の(架空の)現代音楽祭が出てきたりしたので記憶に残っている。主人公は音楽家で、その友人が数学者だったと思う。二人がトレーラーで旅するうちに時間の狭間に落ち込んで……というような話なのだ。世界各地に原因不明のさまざまな時代が同時並行的に存在してしまうという状態になる。
 SFとしても印象的だが、むしろ主人公の(ということは、たぶん定常宇宙論の提唱者である作者フレッド・ホイルの)音楽観が面白かった。現代音楽の行き詰まりをどうすべきかというような問題意識をこの主人公はもっていた。
 主人公はピアノの腕前もたいしたものである。本物のピアニストになるのがいかに大変かなどというトピックに絡めて、パーティーの座興でピアニストになり損ねた人物と腕比べをしたりするエピソードもあった。音楽の何たるかを感ずることのできる人物が主人公というわけだ。その彼が最後に迷い込んだ古代ギリシャ世界で、未来人と音楽で勝負する。彼は確か、バッハとベートーベンで勝負した。勝負をかけて弾いたのはハンマークラヴィーアだったような気がする。さて、その結果、未来人の娘からアーティストとして尊敬され、惚れられてしまうというようなロマンスもあった。
 確か主人公も友人も29歳だった。自分が読んだのがせいぜい二十歳過ぎだったと思う。自分の身と引き比べて、何か冒険のない人生を送っているなあ〜、などとため息をついたような気がする。作曲家はいいなあ、などと思ったりもしたと思う。ものを作ることにあこがれていたのだ。
 で、何が10月1日では遅すぎるのかというと、船に乗っていて、9月の終わりまでにはある地点を通っていないと、別の次元世界に遭遇することもなかった、というようなことだったと思う。
 要するに、このSFではクラシック音楽の魅力と時間とは何かという難問とロマンスと、そしてトレーラーでの旅とギリシャ世界と核戦争後の世界とが次から次へと出てきて、う〜ん、まいった。自分がこの世界に生きているって、どういう意味をもっているんだろうと考えたりもした。最近、復刊されたようなので、読んでみると面白いですよ……、と、日付が変わる前にアップできてよかった…^^。この話題は、10月1日では遅すぎた。

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コメント

こんにちは、Suzume@Takeです。コメントありがとうございます。
「こもへじ」さんのサイトはまさしく(SF用語としての) The Sense of Wonder.ですね。異国に飛び込んだ一旅行者になったような気持ちです。

私の持っている本の発行日はS51/5/31でした。だから読んだのは二十歳過ぎと思います。当時工学部の学生だったのですが、理数系と芸術に強い主人公だと自分と比較してちょっとめげていた思いでがあります。

リンク張らせて貰ってもいいでしょうか?

ちょくちょく来ます。では。

投稿: | 2006年10月 2日 (月) 12時58分

すみません。
同じコメントがたくさん付いてしまいました。
申し訳ないですが消去をお願いいたします。
Suzume@Take

投稿: Suzeme@Take | 2006年10月 2日 (月) 13時01分

Suzume@Takeさん、ようこそいらっしゃいました。おお、Sense of Wonderとはすごいほめ言葉ですね!! 光栄です!!! 自分では、魂がさまよってるWanderer的性格がブログに反映しているのかなという気もいたします...^^。
Suzume@Takeさんと私は、たぶんほとんど同世代ですね。私は文学部英文学科の学生でした。
ええ、ぜひリンクを張ってください。こちらもリンクを張らせていただきます。
ダブっていた同じコメントは削除させていただきました。
また、いつでもお越しください。

投稿: こもへじ | 2006年10月 2日 (月) 14時23分

リンクを張らせて頂きました。
Sense of Wonder は久しぶりに使いました。学生の頃はよく使っていたのですが・・・最近は使うべき対象がみつからなくて。
Wandererですか、私のブログのプロフィールには Wandering photographer と自称ですが書いています。この世代は彷徨っているんでしょうか。
では。また遊びに来ます。

投稿: Suzeme@Take | 2006年10月 2日 (月) 14時46分

えっ、Wandering photographerでしたか。であれば、9月13日の放浪と創造と『永遠の少年』という記事を読んでみてください。ちょっと、面白いです。こちらも、リンクを張らせていただきました。

投稿: こもへじ | 2006年10月 2日 (月) 15時19分

放浪と創造と『永遠の少年』。
ドキッ、とした。

戦略的に放浪する。言い得て妙。
私はこの分野については詳しくないですが、私が放浪と思うことは自分の意識で動く行動だと思ってます。そこには「何か」の目的があると思いますが、その「何か」が分かっていての行動か、「何か」が分からなくての行動か、この違いは大いにあると思います。
放浪ではなく彷徨ってしまうとアブナイなと。
このサイトで彷徨ってしまいそうです。

投稿: Suzeme@Take | 2006年10月 3日 (火) 01時17分

学生時代は、あちこちさまよっていました。北へふらり、南へふらり、彼方へぶらり、離島へゆらり...。長いこと船酔いしそうな気分で生きてきました。
最近は、ここまできたら(年齢的にということですが)、なけなしの自分の強みを何とか活かして、やりくりしながら生きていく以外ないよなあ、と思っています(おお〜、暗い!)。
若いとき(中途半端にせよ)あちこちさまよったのは、やっぱりよかったです。この経験が何か将来のためになるんじゃないかとぼんやりと考えていたことは確かですから、戦略的と呼べるかどうかは別として、それなりに意識的な行動ではあったわけです。
それはそれとして、Suzeme@Takeさん、このサイトでさまようよりも、秋のすがすがしい空気を吸いに外へ飛び出したほうが、よっぽど気持ちがいいですよ!!


投稿: こもへじ | 2006年10月 4日 (水) 06時30分

天気が悪いと放浪やめて家に居ようと思う軟弱ものです。
今はわかりませんが、当時のSFでは Inner Space. Another World. parallel World.などという言葉がよく出てきました。いろんな世界があるけど気づかないだけらしいです。私はFantasyとは異なる世界のような印象を持っています。そういう世界に行ったきりになるとアブナイですがたまにはそういう世界も悪くはない。
Speculative Fictionと言っていた作家もいましたね。
とは言うものの、私はカメラを持ってプチ放浪でもしてきます

投稿: Suzeme@Take | 2006年10月 4日 (水) 09時12分

いってらっしゃい ^^ /。

投稿: こもへじ | 2006年10月 4日 (水) 15時01分

♪こもへじさん「データ復旧術」の伝授ありがとうございました。すごいものですね。失った内容のかなりの部分を再生することができそうです。

♪他の方がSense of Wonderという言葉を使われていましたね。実は私は前の職場で「Sense of Wonder Club」というグループを作っていたのです。略称SWCです。何てことない、ただの飲み会仲間なんですが・・・。目的は常に何か面白いことを探す心を分かち合うとでも言えましょうか。  

投稿: ジョヴァンニ・スキアリ | 2006年10月 6日 (金) 12時30分

めどがたちそうですか。できるだけ多く復旧できるといいですね。
考えてみれば、このインターネットというものもSF的ですよねぇ。昔はテレビ電話もSFの世界の話と思われていたのが、今では当たり前のことになっているようですし...。世の中の変化が早くて、なかなかついていけません。
SWC、ネーミングがしゃれてますね。センス・オブ・ワンダー......。そういうものを追い求める感覚は何歳になっても必要ですよね、やはり。そういうことを気楽に話せる場があるといいですよね。ブログはそういうネットワークの結節点になりうるのかもしれませんね。
ところで、「ジョヴァンニッキ」をリンク先リストに加えさせていただきました(前の時、リストに入れていたように勘違いしておりました。遅れて失礼しました)。これからも、ますます盛大に面白い記事をアップしてください。期待しております。

投稿: こもへじ | 2006年10月 6日 (金) 18時54分

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