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2007年12月24日 (月)

文字絵のトリビア(1): 夢二の「へへののもへろ」

「博士かな昔へへののもへ哉」

 これは、100年前の明治40年(1907年)に竹久夢二が平民新聞に発表した俳句とのことです(『夢二句集』p.62、p.329)。
 この句の「へへののもへ」を読んで、おやっ? と思いました。まず、『へへののもへじ百面相』で紹介されている「へのへのもへ」は知っていましたが、「へへののもへ」は初めて知りました。それは置いておいても、(イ)なぜ「へのへのもへ」ではなく「へへののもへ」なのだろうか、(ロ)なぜ「へへののもへ」ではないのかなと首をひねりました。以下で、どうしてそういう疑問をもったのかをご説明しましょう。
 夢二は2年後の明治42年に初の著書『夢二画集 春の巻』(初版)を出版しています。そこには、

「故郷(ふるさと)に帰ればへへののもへかな」

という句が出てきます。この句の存在を知った時に初めて、なぜ「へのへの」でなく「へへのの」なのかという疑問を抱きました。というのは、『へへののもへじ百面相』という本で、七文字によるこの種の顔の戯画は、江戸文化型(東日本の基本型)の「へへののもへ」と 京文化型(西日本の基本型)の「へのへのもへ」に2大別できる、ということを読んだことがあったからです。これからすると、夢二は岡山県出身なので、「へのへの文化圏(京文化型)」に属するはずです。だから、「へへののもへ」の部分に違和感を感じたのでした。
 さらに調べていたら、文頭に掲げた『夢二句集』に「博士かな昔へへののもへ哉」という句があるのを昨日知りました。それで、明治40年に「もへ」で明治42年に「もへ」……? なぜ変えたんだろう、と(ロ)の疑問を抱くことになったわけです。
 この2つの疑問に対する答えは今のところわかりません。憶測ではありますが、(イ)に関しては、(特に最初の本である『夢二画集 春の巻』を出す際の「へへののもへ」に関しては)東京で受けるように慎重を期して「へへのの」という関東で一般的な表現をえらんだということではないでしょうか。
 もし上の(イ)に関する憶測が正しいとすれば、(ロ)の「へへののもへ」は夢二が臨時に作った言葉である可能性があるかもしれません。そう考えられないこともないような気がするのは、夢二郷土美術館ブログでも紹介されている

茂次郎橋 由来
 花のお江戸ぢゃ 夢二と呼ばれ
 郷里へかへれば へのへの茂次郎
              夢二つくる
              芳水しるす

という夢二の残した戯れ歌が残っているからです(茂次郎[もじろう]は夢二の本名です)。ここでは「へへのの」ではなく「へのへの」になっています。そしてここの「へのへの」は「へのへの文化圏(京文化型)」に属する岡山の地にしっくりなじむようです。その証拠に、夢二が暮していた当時はなく、後世になって架けられたという茂次郎橋の柱にはしっかり「へのへのもへ」と刻まれているように見受けられます。つまり、橋を架けたこの土地の方々にとって七字の戯画の普通の呼び方は「へのへのもへ」ではないかと推測されるわけです。

         ……  ……  ……  ……  ……  ……  ……  

 これから、「文字絵のトリビア」と題して、文字絵について気がついたこと、わかったことを筆のおもむくままに書いてみたいと思います。なるべくどこにも発表されていないような目新しいことを掘り起こしますので、どうぞお楽しみに。

         ……  ……  ……  ……  ……  ……  ……  

 今日はクリスマスイブです。夢二には「クリスマスの贈物」という童話があるのを最近知りました。この物語の主人公のみっちゃんはいくらたくさん贈物があっても喜ばせることができない子のようですが、こもへじは違います! 最近、ささやかなことに幸せを感じるようになったような気がします。願わくば来年の今日まで「文字絵のトリビア」のネタが尽きませんように!! サンタさん、こもへじにネタと気力と愛の手を…。(それと、できましたら仕事を少々…。)
では、では、皆様、おやすみなさい。

文献
・『へへののもへじ百面相』、田村市太郎著、自由現代社、昭和五十八年
・『夢二句集』、木暮享編、筑摩書房、平成六年
・『へのへの夢二』、久世光彦著、筑摩書房、二○○四年 (p.58、p.228)

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