2006年9月 1日 (金)

再び『銀の匙』、そして「癒しの文字絵」

 大修館書店の月刊『言語』1984年4月号の特集は「文字へのいざない」で、そこに興味ある記事を見つけた。以下に引用する。

...(前略)中勘助は『銀の匙』で、

 平仮名の「を」の字はどこか女の坐った形に似ている。私は小さな胸に、弱い体に、なにごとかあるときにはそれらの「を」の字に慰藉を求めていたので、彼らはよくこちらの思いを察して親切に慰めてくれた。

と人目を離れて〈を〉の字を落書きした子供の頃を書いている。アルファベットいずれかの文字の姿に慰藉を求める子供が欧米にいるかもしれない。

 これは「文字の遊び」と題する郡司利男先生の文章の一節である。日本には文字を人に見立てる文化が確かにあった。例えば、「乃」の字を杖をついた人に見立てて「杖つきの乃」と呼んでいた。『銀の匙』の「を」の中勘助の場合も、そういう伝統に連なっていたのかもしれない。『銀の匙』には「ヘマムシ入道」も出ているので、これは文字絵関連の文献として貴重な本だと改めて思った。
 そう言えば、山東京伝の『奇妙図彙』に「をいらん」というのがあった。そこでは、「を」は女の人の結った髷に見立てられていた。中勘助の場合は坐った女の形というから、髷ではなさそうだ。
 ところで、郡司利男先生のおっしゃるように、アルファベットの文字の姿に慰藉を求める子供は欧米にもいるのだろうか。欧米とはいわず、今の日本ではどうだろう。古今東西の文献をあたれば、似たような感性を見出せるのかもしれない。でも、アルファベットを書く欧米の人を何人か見たことがあるが、カナ釘流の字が多かった。アルファベットの1字を何かに見立てて慰藉を得ることがあるようには思えない(と言っては失礼であろうか)。いずれにせよ、書くことによって落書きでもわずかな慰藉が得られれば小さな子供には十分なのだろう。だからこそ日本では「へのへのもへじ」が今もどこかで書かれていることになる。
 そう考えると、「慰藉」というのは文字絵にとって一つのキーワードになるかもしれない。はやりの言葉で「癒し」と呼んでみてもよい。「癒しの文字絵」、う〜ん、なかなかいい。こういうふうに個人的な「慰藉」や「なつかしさ」の感情が28億円のブランクーシに対抗できる点だと思う(この件はまた別稿で)。
 ということで、そういう「癒しの文字絵」の例をここで紹介いたしましょう! これは2004年の東京都文京区の第55回絵画展で奨励賞をいただいたこもへじの作品であります。絵解きは後日ということで、きょうはコメントなしで絵の写真のみをアップします。そうそう、タイトルは『文字絵ごくらく大温泉』です。

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2005年11月 3日 (木)

館林美術館のハンス・アルプ展に行ってきました。

 群馬県立館林美術館のハンス・アルプ展に行ってきました。道が混んでいなければうちから車で40〜50分で館林美術館に着きます。行ったのはこれで2回めです。祝日なので、どこかへ連れて行って欲しいと言われ、それなら美術館にでも行こうかと思い、館林美術館のホームページを覗いてみたらハンス・アルプ展をやっていることがわかったわけです。それで、昼少し前に一家で出かけました。
  アルプ展と言えば、いつかどこかでだいぶ前に見た記憶がありました。それは1986年の4月5日から1カ月にわたって埼玉県立近代美術館で開催された、生誕100年記念アルプ展」だったことがわかりました。今日は文化の日で、学芸員による作品解説会の日だったので、いろいろとおもしろい話を聞くことができました。そのなかに、20年前に各地でアルプ展が開かれたという説明がありました。その時の作品も半分くらいは来ているとのことでした。
 アルプの作品は、今回、8つの部に分けて展示されていましたが、その中では、
4. 芸術形式としての書く行為
——白と黒、それはエクリチュール
5. アルプのオブジェ言語
——パード百科事典
6. メタモルフォーゼという考えの重要性について
——葉はトルソに変身する。トルソは花瓶に変身する
あたりに興味をもちました。アルプの作品は、ダブルミーニングという観点から見るとおもしろいのではないかと思いました。(続く)
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2005年10月29日 (土)

モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」初演される

 人と土地の関係をたまに考える。ある土地に生まれ、別な土地で成長し、また別な所で働いて、老いてゆく。今では日本でもそれが普通かもしれない。人の移動の激しいこの世界では、どれくらいの人が生まれた家で死ぬことができるのだろう。
 ところで、生まれてから死ぬまでいろいろな土地と関わる中で、誰にも相性が良い土地というものができてくるのかもしれない。モーツァルトにとってそれはプラハだったようである。
「フィガロの結婚」が大ヒットし、交響曲38番「ドン・ジョヴァンニ」が初演された街、プラハ。ここは、ウィーンとともに、ぜひ一度訪ねてみたいと思う。
 さて、ここで彼が指揮して初演された「ドン・ジョヴァンニ」(K.527)は、1787年の今日、10月29日に、プラハの
スタヴォフスケー劇場で初演された。それを記念して、今日は正面を向いたモーツァルトの顔をアップします。

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2005年10月14日 (金)

リアル大 Bach (正面顔)

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能面のような Bach から...
こうなります。コメントをどうぞ

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2005年10月13日 (木)

カスパール・ダヴィット・フリードリヒの「孤独な木」{RETROSPECTIVE COMMOHEDGE 14}

 ドイツロマン派というと音楽の分野を連想するが、絵画も並ではない。
 ここに、1枚の絵はがきがある。1985年に東京国立近代美術館の「19世紀ドイツ絵画名作展」で買った、カスパール・ダヴィット・フリードリヒ(1774〜1840)の「孤独な木」、別名「朝陽のあたる村」である。とても美しい絵だった。フリードリヒはドイツロマン派を代表する画家である。
 今年の「ベルリンの至宝」展にも出展されるということは知っていた。しかし、一度見た印象を二返目に打壊わすのは惜しいと思い、見に行かなかった。「孤独な木」の鑑賞は一度に限ると思う。
 などと書いてしまったが、実はあまりにもフリードリヒの絵に惹かれたので、「19世紀ドイツ絵画名作展」には確か3回通った気がする。今回「ベルリンの至宝」展ではフリードリヒの絵は3枚とのことだが、85年の時は「山上の十字架」や「希望号の難破」も来ており、数はもっと多かった。 
 中でも「孤独な木」がすごいと思ったのは、羊飼いが巨木に背をもたせかけている傍らで羊たちが草を食む一見のどかな風景に、ただならぬ気配が感じられたからである。ただ、それは精神に変調を来す前に陥るという世界没落感というようなものではないだろうし(それと紙一重かもしれないが)、目に見える世界の背後にある彼岸という感じに近いが、それともやはりちょっと違うと思う。
 怖いけれど、生き生きしていて美しい......。ポイントは、自己の内面を通して見た風景や自然ということだろうか(そこには、難破のような破滅的な要素も含まれる)。フリードリヒは、自分の内面を見つめることによって初めて見えてくる世界を描いた画家だった。うまく自己に沈潜すると、自然も人生も神秘的な輝きを帯びてくるのだろうか。

 

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2005年10月12日 (水)

能面のような Bach から...

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これに、Sebastian というつづりをプラスすると、バッハの正面顔が描けます。この前の横顔と対になります。さあ、どんな顔になるでしょうか?  二、三日中にアップします。どうぞ、お楽しみに。

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2005年10月10日 (月)

リアル大Bach (横顔)

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パーツ復元クイズ :バッハ編 の答えです。

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2005年10月 7日 (金)

着色筆順によるパーツ復元クイズ :バッハ編

 着色筆順は、文字と文字絵に描かれた文字線との対応を示す方法の1つです。つづり字の文字ごとに色を変え、そのつづり字と同じ色の文字線を文字絵のなかに見つけることにより,文字絵の筆順を知ることができます。すなわち、1字ごとに色分けされたつづりと、描かれた線画とを比較すれば、線画のどの部分にどの文字(文字線)が使われているかがわかります。原則として、つづり字の順に描いていけば、文字絵ができ上がるわけです(実際には、例えば,Mozart の場合のように、描き順を変えたほうが描きやすい場合もけっこう多いのですが)。
 パーツ復元クイズ : ヘンデル編マーラー編シューベルト編などで、着色筆順の例をご覧いただいた方もおられると思います。
 今日は、Sebastian Bach に挑戦してみてください。といっても、この13文字をすべて絵にするというのは難しいでしょう。そこで、BacHの4文字でバッハの右向きの横顔を復元してみてください。縮尺は文字ごとに変えてありますので,ご注意ください。  コメントをどうぞ

sebastianbach1009

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2005年10月 6日 (木)

みんなで描いた Beethoven

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2005年10月 5日 (水)

正面顔の Beethoven のパーツ

 きのうのBeethoven のパーツを示しておきます。目は左が o 、右が e で、いずれも横になっています。瞳はうすく塗りました。文字線以外の補筆はなるべくしないようにしていますが、Beethoven の場合は瞳を塗りつぶしたほうが表情が生きます。    コメントをどうぞ

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